2015-01-01から1年間の記事一覧

小野不由美『東亰異聞』

きょうのことば 『物の怪の仕業でしょうか』 「さてね。いずれにしても夜の住人なのは違いない。だけれどねえ、夜の住人だからといって、物の怪と決めつけるのはどうだかね。いちばん暗い闇は人の胸の内に巣くうものだから」〈人形遣い〉 ──小野不由美『東亰…

アルベール・カミュ『異邦人』

きょうのことば 「これがこの裁判の実相なのだ。すべて事実だが、また何一つとして事実でないのだ!」〈被告人・ムルソーの弁護士〉 ──アルベール・カミュ『異邦人』より アルベール・カミュ『異邦人』(訳・窪田啓作)を読みました。本作についての批評、と…

竹内真『図書室のキリギリス』

きょうのことば 「そりゃまあ、ネットなら円花蜂 (マルハナバチ) の意味くらいすぐ分かるかもしれない。でもね、調べごとをしたい利用者に、情報を探す手順を提供するのも司書の仕事ですよ。学校図書館ってのは、教師が教材に使う資料を探しに来ることもある…

古内一絵『快晴フライング』

きょうのことば 蝉 (せみ) は長い間を地中で過ごし、ようやく青空の下に出てきたら、わずか一週間程度で死んでしまう。だからこれは命の歌だ、絶唱だ。 だけどやっと外に出て「さあ歌うぞ」と蛹 (さなぎ) を破ってみたら、蝶の羽が出てきた。そうしたら蝉は…

ローレン・オリヴァー『デリリウム 17』

きょうのことば あらゆるものが美しく見えた。『沈黙の書』には、デリリアは知覚をおかしくし、論理的に考える力を失わせ、正常な判断を下す能力を奪うと書いてあった。でも、書いてないこともあった。 愛は世界を実際よりもすばらしいものに変えるって。熱…

フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』

きょうのことば 乞食だったら、むしろたとえ話や真似事をずっと続けなくちゃいけないわ。容易ではないかもしれないけれど〈セーラ・クルー〉 ──フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』 フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』(訳・畔柳和代)を読…

ハーマン・ランドン『灰色の魔法』

きょうのことば 「つまり、あなたのグレイ・ファントムは、現代に蘇った豪華版ロビン・フッドというわけか」〈マーカス・ルード〉 ──ハーマン・ランドン『灰色の魔法』より ハーマン・ランドン『灰色の魔法』(訳・中勢津子)を読みました。本作についての批…

コナン・ドイル『緋色の研究』

きょうのことば 人生という無色の糸桛 (いとかせ) には、殺人という真っ赤な糸がまざって巻き込まれている。それを解きほぐして分離し、端から端まで一インチ刻みに明るみへさらけ出してみせるのが、僕らの任務なんだ。〈シャーロック・ホームズ〉 ──コナン…

戦争行為の開始後または宣戦布告の効力が生じたる後、一〇時間以内に次の処置をとるべきこと。

きょうのことば 戦争行為の開始後または宣戦布告の効力が生じたる後、一〇時間以内に次の処置をとるべきこと。即ち下の各項に該当する者を最下級の兵卒として招集し、できるだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実践に従わしむべし。 一.国家の元首…

黒板に向かって一回転をなしたと云へば、 それで私の伝記は尽きるのである。

きょうのことば 回顧すれば、私の生涯は極めて簡単なものであった。その前半は黒板を前にして坐した。その後半は黒板を後にして立った。黒板に向かって一回転をなしたと云へば、 それで私の伝記は尽きるのである。 ──西田幾多郎 京都帝国大学教授 退任の辞よ…

火山の癖というものは、なかなか学問でわかることではないのです。

きょうのことば 火山の癖というものは、なかなか学問でわかることではないのです。われわれはこれからよほどしっかりやらなければならんのです。 ──宮澤賢治『グスコーブドリの伝記』より ペンネンナーム老技師のことばから 今年のお正月は、神奈川県は箱根…

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

きょうのことば 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 ──日本国憲法 第九九条より 昨日、5月3日は日本国憲法施行から六八年を迎える憲法記念日です。わずか六八年前に皇居前広場で開かれた新…

降旗康男『鉄道員 (ぽっぽや)』

きょうのことば げんこのかわりに旗を振り 涙の代わりに笛吹き鳴らし わめく代わりに裏声絞る ──降旗康男 監督作品『鉄道員 (ぽっぽや)』より 映画『鉄道員 (ぽっぽや)』を遅ればせながら鑑賞しました。本作についての批評です。

ブリコラージュ bricolage とは,フランス語で〔素人の手仕事,の意〕

きょうのことば ブリコラージュ bricolage とは...... フランス語で〔素人の手仕事,の意〕 手近なものを何でも利用して作業すること。科学的な専門技術に対置される。 ──『大辞林』より 私は料理を作ることが好きです。とはいえ、まだまだ半人前。今日も今…

冬は歳の余、夜は日の余、陰雨は時の余なり

きょうのことば 読書三余 冬は歳の余、夜は日の余、陰雨は時の余なり ──『三國志』「魏志・王粛伝」より 今日、4月23日は「子ども読書の日」。同日から5月12日まで「こどもの読書週間」となります。そんな折に「きょうのことば」は『三國志』の故事から。 昔…

陸海軍人の不逞なる一団に襲われたる犬養首相は......

きょうのことば 陸海軍人の不逞なる一団に襲われたる犬養首相は、国民が、この不祥なる事件の発生を知るや知らざるうちに、遽然として逝去した。真に哀悼痛惜に堪えざるところである。 (略)その老首相を、政治の改革に藉口して虐殺しさるにいたっては、か…

万緑叢中紅一点、人を動かすに春色多きを須いず

きょうのことば 万緑叢中紅一点、人を動かすに春色多きを須いず ──王安石『詠柘榴詩』より 「きょうのことば」を書いていて、ふと麻雀に明け暮れた頃を思い出します。麻雀における役の一つに「緑一色 (リューイーソー) 」があります。役満貫であるにもかかわ…

夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る

きょうのことば 夏も近づく八十八夜野にも山にも若葉が茂る「あれに見えるは茶摘みぢやないか茜襷 (あかねだすき) に菅 (すげ) の笠」 ──『茶摘み』文部省唱歌より 四月二〇日は、こよみの上では春の最後を告げる二十四節気、穀雨です。百穀を潤し、穀物の成…

歴史がつくられていようなどとは、考えもおよびませんでした

きょうのことば 「歴史がつくられていようなどとは、考えもおよびませんでした。私はただ、いいなりになることに疲れていたのです」 ──『ローザ・パークス自伝』(高橋朋子訳)より 日記を書く心構えで、私が半ば夢遊病者の譫言のように言う、「個人史と社会…

はじめに

朝日新聞の「天声人語」をはじめとする日本全国の一面コラムを拝読することが、私の長年来の趣味です。このブログでは、全国の新聞社の書き手の方々の力をお借りしつつ、日本全国津々浦々を旅してみます。 「きょうのことば」欄では、一面コラムを見渡す中で…